ミヤザキメガネ

CGデザイナーの制作日誌!

https://miyazakimegane.hatenablog.com/

シナリオ 「雪と泣きぼくろ」小さい喫茶店のはなし

 

引っ越しの整頓中、何年か前にシナリオセンターに

通ってた時に書いたシナリオが出てきました。

ドラマとしては10分ドラマくらいの尺です。

 

拙いながらに書いたものですが、一人だけこれを読んで泣いてくれた

クラスの人がいてとっても嬉しかったのを記憶してます。。

 

良かったら読んでください!

 

勝手ながら

秋月ミヤコは女優の宮本 信子さん

秋月久美は女優、麻生久美子さん、

米倉治は俳優、西田敏行さん

 

をイメージしてました。

 

 

「雪と泣きぼくろ」

 

 

 人物

 秋月ミヤコ(66

 秋月久美(36

 秋月久美(15

 米倉治(62

 

 

 

○喫茶店「アキヅキ」外観(夕方)

   雪が降りしきる商店街。所々シャッターが下りている。

   その中に一軒だけ明かりの付いた建物が見える。

 

○同・店内

   秋月ミヤコ(6)、テーブルを拭き、サイフォンに火を

   付けたところに米倉治(62)が入って来る

ミヤコ「いらっしゃい」

   腰を押さえながらカウンターから顔を出すミヤコ。

米倉 「いやー、降るわ降るわ」

   米倉上着の雪を払いながらカウンターに座る

   タバコを加え手を差し出して、

米倉 「マッチ」

ミヤコ「もうないよ」

米倉 「なんでえ、そこに1っこあんじゃねーか」

   棚のオルゴールの隣に飾ってあるマッチ箱。

   柔らかい表情の女性が笑っているシンプル

   モダンなイラスト。

ミヤコ「だめだよ、これ最後んだから」

米倉 「最後?ああー、娘さんの」

ミヤコ「そうさ、大事にしてんだよ」

米倉 「そらいけねえ、ライター。百

   百円玉を差し出す米倉。

ミヤコ「まいど」

   ふわ、とタバコの煙が燻る。

米倉 「とうとう今日で最後か」

ミヤコ「あんなおっきなショッピングモールなんてねえ、

    いらないけど。私もこーんな年だし」

   ミヤコ、自分の乾燥した手をさする。

米倉 「昔は賑わったなあこの通りも。しかしだいぶねばったんじゃねーか」

ミヤコ「なんつうか、この店なくなるとねえ、もう本当にあの子が

   戻ってこないような気がしちゃってさ」

米倉 「あれから何年たつの」

   ミヤコ、のしわを見つめながら

ミヤコ「21年・・・だね」

 

(ミヤコの回想・21年前)

○ミヤコ自宅アパート・居間(朝)

   段ボール箱を抱え居間に入ってくるミヤコ。

ミヤコ「久美、マッチ届いたよ。絵描き久美の初商品だね」

久美 「すごい!本当商品みたい!」

ミヤコ「かっこいいじゃない、お店のマッチ、ずっとこれにしようね」

久美 「あれ・・・一個忘れてた」

ミヤコ「なに?」

   マッチのイラストの女性の目元に泣きホクロを

   ひとつ書き加える久美。

久美 「お母さん、ここにホクロあったんだ」

ミヤコ「何?これ私?」

久美 「あれえ、言わなかったっけ」

ミヤコ「言わないよお」

   笑う二人。

 

○同・居間(夜)

   居間のテレビのチャンネルレバーをカチカチ

   回している久美。ミヤコが買い物袋を提げて入ってくる。

ミヤコ「久美?ごめんね?今日の授賞式行けなくて・・・」

久美 「(テレビ画面見たまま)いいよ別に」

   久美はそういいながらテレビを消し、居間を

   出て廊下を早足で歩いてゆく。

   追いかけるミヤコ。

 

○同・廊下(夜)

ミヤコ「式、どんなだった?久美の作品のこと何か言われた?」

久美 「興味ないくせに」

   別の部屋に移動しバタン、とミヤコの目の

   前でふすまを閉めてしまう久美。

   一人廊下に取り残されたミヤコ。

 

○喫茶店・店内(昼)

   カウンター内で急がしそうにナポリタンを炒めるミ

   ヤコ。店内は満席。カウンター内の黒電話が鳴る。

   電話のほうをさっと見るミヤコ。

   店のドアが開き、サラリーマン風の客が3名入ってくる

ミヤコ「いらっしゃいませ」

   汗をぬぐう。ナポリタンを皿に移しながら

ミヤコ「少々おまちくださいね」

   電話はずっと鳴り続けている。

 

○喫茶店・店内(夕方)

   手のしわを見つめながら、ため息をつくミヤコ。

ミヤコ「大事な授賞式も間に合わないし、死に目にも会えないなんて、

   ダメな母親だよ」

米倉 「1か、これからってときになあ、(マッチを見て)なかなか

   センスいいぜ、モダンっちゅうか」

ミヤコ「そうだろう?」

   店のドアが開く音。カラン。振り返るミヤコ。

   激しい吹雪が店内に流れ込み女性(36)が一人入ってくる。

女性 「すみません、電車すぐ来ちゃうんですけど・・・

   珈琲って、すぐ飲めますか?」

   女性をぽかんと見るミヤコ。

ミヤコ「あ・・・はい、お出しできますよ」

   手招きで席を勧めるミヤコ。

   珈琲カップを持ち上げる女性の手。一口すする。

   5席空けた所からそれを見ているミヤコと米倉。

米倉 「(ひそひそ声で)美人じゃねーか」

ミヤコ「いらないこといってんじゃないよ」

米倉 「(ウキウキした様子で)あの、お嬢さん、電車は何時の?」

女性 「5時21分発なんで・・あと20分くらいでしょうか」

米倉 「あー、駅なんてすぐそこだからねえ。暖まっていきなさいよ」

ミヤコ「あんたん家かい。(笑いながら)ゆっくりしてってねえ」

女性 「(笑顔で)はい」

   女性、カウンターのマッチに手を差し伸べる。

米倉 「それ、ミヤちゃんの、この店長さんの娘さんが描いたの。上手いでしょ」

女性 「へえ・・・」

   マッチをじっと見る女性。

   その女性をちら、と見るミヤコ。

   カチリ、時計が5時10分を指す

   カウンターテーブルに珈琲が3カップ

   楽しげに笑う3人。

   女性は席を移動して二人の近くに座っている。

女性 「はい、画家になりたくって」

ミヤコ「へえ、お嬢さんも」

米倉 「でもご両親寂しいだろうねえ娘が上京しちまって」

女性 「母には申し訳ないなあって。家で一人なんで」

米倉 「あれま、そいつは寂しいねえ」

女性 「たまに顔見せてあげたいんですけどなかなか遠くって」

米倉 「いやあ、今日もそんで帰ってきたわけだろ、いい娘さんじゃねえか、

   なあミヤちゃん」

ミヤコ「そうだよお、ちゃあんと子供ががんばって毎日楽しんでいれば

   それが一番の孝行さ」

女性 「いつも応援してくれるんです。でもこの間悪いこと言っちゃって」

米倉 「悪いこと?」

女性 「私の絵なんか興味ないくせにって。ちょっとカッカしてただけ

   なんですけど、お母さん真に受けちゃって」

   ぽかんと女性を見るミヤコと米倉。

米倉 「いやあ、よくあるよ、なあ?そういう喧嘩、大丈夫だって。

   お母ちゃん気にしてねえから、なあ?ミヤちゃん」

   沸騰するサイフォンの珈琲を見つめるミヤコ。

   女性、カップ珈琲の湯気をみつめている。

ミヤコ「オムライス、オムライス食べないかい?」

女性 「オムライス?」

ミヤコ「そうさ、どうせ材料いっぱい余っちまうからさ、

   食べてっておくれよ、ね?サービス!」

   期待の目で女性を見るミヤコ

   女性、珈琲と時計を交互に見て

女性 「でも、すぐ電車来ちゃうから」

   時計の秒針がカチリと動く5時16分を指す。

ミヤコ「ああ、そうだよねえ、遅れたら大変だもの、

   1本遅らしただけで、いろいろと・・ねえ」

女性 「はい、遅らすこと・・・出来ないんで」

ミヤコ「そりゃそうだよ、ねえ・・・」

   無理やりに笑っているミヤコ。

   米倉は悲しげな表情でミヤコを見る。

ミヤコ「あ!そうだアップルパイがいっぱい余ってるんだよ、一口食べな?

   ね?一口だけなら大丈夫だろ?」

米倉 「ミヤちゃん、お嬢さん急いでるからさあ」

女性 「あ、いえ、じゃあ、一口だけ」

   ミヤコ急いでアップルパイを切る。

ミヤコ「どーうーぞ」

   別のアップルパイを1ホール丸ごとラップで包み始めるミヤコ。

ミヤコ「沢山余ってるからね、包んだげるから、もっていきな、日持ちするし」

米倉 「ミヤちゃん!お嬢さんそんな一杯いらないって」

ミヤコ「あ、そうだ、シフォンケーキもあるんだよ?好きでしょう。

   チョコレートのもあるんだよ?」

米倉 「ミヤちゃん!」

ミヤコ「なんだい、あたしの店だよ?」

   二人が言い合う隣でそっとマッチのほうに目を向ける女性。

女性 「実は今日はじめて飲んだんです。珈琲。こんなに美味しいんですね」

ミヤコ「へえ、初めて・・・飲んでみたくなったんだねえ?

女性 「今日で・・最後だから」

   ミヤコ、女性をじっと見る。

女性「ここで飲めるの、最後だから」

   ミヤコも女性をみつめている。

   米倉、2人を交互に見る。

   時計が5時20分を指す。

   女性、マッチをミヤコに渡す

   泣きボクロが描きたされた女性の顔。

   ミヤコ、サッと顔を上げる。

   店内にはすでに女性の姿はない。

   時計が5時21分を指す。

   米倉、思わず立ち上がり、はずみで椅子がガタンと音を立てて倒れる。

 

 

○喫茶店・外観

   急いで店の表へ駆け出すミヤコ。後ろから米倉も追いかける。

   深く積もった雪に足跡一つない。

ミヤコ「久美・・・!久美・・・! 」

   叫び続けるミヤコ。

   空からは美しい雪が降り続けている。